河川は水の通りみちですが、同時に土砂の通りみちでもあります。土砂は河川環境に欠かせないものであり、近年の堆砂対策は、単純に堆砂量を軽減させるだけでなく、ダム下流の土砂環境を保全する観点からも必要性が謳われるようになっています。
土砂環境保全の観点からは堆砂を除去すると同時に、除去した堆砂を下流河川に供給する技術が必要になります。堆砂除去の最も一般的な方法は、掘削・浚渫ですが、こうした状況を背景に、掘削・浚渫土をダム下流河道に仮置きし、出水時に流下させる試みがなされるようになっています。また、土砂のバイパスや、水位低下によるフラッシングなど、貯水池を通過する流れを利用し、下流に流下させる施設も設置されるようになっています。
ダム技術センターでは、土砂環境の評価を含む堆砂対策計画の策定や必要な施設の計画・設計を検討・実施しています。また、近年注目されている、吸引工法の技術開発にも取り組んでいます。吸引工法は、貯水池上下流の水位差を用いて土砂輸送管に流れを発生させ、輸送管入口から堆砂を吸引するもので、下流に供給する粒径別土砂量の制御精度の向上や費用低減が期待されています。