わが国の河川は、地形が急峻で、延長が短く、洪水による災害の発生しやすい条件を備えておりますが、さらに近年の経済成長に伴う国土の開発により、雨水の河川への流出が促進され、治水施設の整備が鋭意進められてはいるものの、なお年々各地において集中豪雨等による災害が頻発する状況にあります。
一方、異常な渇水の発生も、従来のような大都市圏のみの現象ではなく、全国的な広がりを見せており、特に昭和53年渇水に際しては、全国396市町村において長期の給水制限のやむなきに至るなど、渇水時の水不足が深刻な社会問題となっております。
また、昨今の石油事情に関連して、国産エネルギーとしての発電水力の利点が見直され、その開発の重要性が認識されてきております。
これらの諸情勢から、治水安全度の向上、水資源の安定的供給の確保、発電水力の有効利用等の社会的要請が、国政上及び地方行政上における緊急かつ重要な課題となり、その解決の役割を担うダムの建設の推進が、今日強く求められているところであります。
ダムは、その建設及び管理に高度の技術を要する大規模構造物でありますが、特に最近では、地形、地質等の条件の良好なダムサイトが少なくなり、その建設における技術的困難が増大しつつあります。また、ダムの建設により関係地域に生ずる影響については、国民の意識の変化等に伴い、損失の補償、公共補償等に加えて、水源地域対策のような広範かつ総合的な対策が要求されるに至っております。
従って、今後ダム事業を積極的に推進するためには、技術の一層の向上を図るとともに、必要な専門技術者を確保していくことが不可欠であります。しかし、技術の向上のための調査研究は、各ダム事業者の個別の対応によっては必ずしも十分な成果を期待し得ず、また、専門技術者の確保についても、既にその不足がダム事業の施工の隘路となる事態が生じており、この傾向は、今後ますます強まるものと考えられます。
よって、ダム事業の円滑かつ効率的な施工に寄与するため、ダムの建設及び管理の技術に関する調査研究、ダムの建設に伴う用地補償等に関する調査研究等を統一的に行うとともに、専門技術者をプールし、これを効率的に使用して、各ダム事業者に対する技術協力を行う等の事業にあたる組織として、ここに一般財団法人ダム技術センターを設立するものであります。