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理事長挨拶

少子高齢化の進展、異常気象の頻発、東北地方太平洋沖地震や熊本地震等の大災害の発生等を背景に、ダムに対する社会的要請は、カーボンニュートラル社会の実現、事業の一層の効率化、整備・管理DXの推進、既存ストックの有効活用、ダムの安全性に対する説明責任など、さらに多様化してきています。近年では、平成30年西日本豪雨災害や令和元年台風第19号災害時に国土交通省所管の数多くのダムが洪水調節効果を発揮しました。このような中、国土交通省では、既設ダムを徹底活用する「ダム再生ビジョン」(平成29年6月)を策定するなど、ダム再生の取組みがより一層推進される状況にあります。また、流域治水関連法が令和3年5月に公布されるなど、気候変動の影響による降雨量の増加等に対応するため、流域全体を俯瞰しあらゆる関係者が協働して取り組む、ダムの事前放流など「流域治水」が強力に推進されています。
 
ダムは、その整備や管理に高度な技術を要する大規模構造物ですが、特に最近では、地形、地質等の条件の良好なダムサイトが少なくなり、その建設や再生・再開発における技術的困難さが増大しつつあります。このため、調査・計画・設計・施工から管理に至るまで様々な技術的課題を克服する高度な技術力が必要となります。また、ダム事業を効率的に推進するためには、技術の一層の向上を図るとともに、高度な技術力を維持する優秀な専門技術者を確保・育成していくことが必要不可欠です。このような社会的必要性から、ダム技術センターは、47都道府県の出捐を得て、昭和57年9月24日に設立されました。設立以来、今日までダム技術を支援する組織として信頼を頂き、多くのダム事業の実施に貢献できたと自負しています。これはひとえに国土交通省や各都道府県等関係機関の皆様方の温かいご支援とご協力の賜物と考えています。
 
当センターの業務は、調査研究・技術開発、技術協力、技術者育成、普及啓発、国際技術交流などから成ります。ダムを取り巻く状況に適切に対応しながら、全国のダムの整備と管理において、質の高い研究開発と技術協力の実績を重ねて来ました。特に最近は、①台形CSGダム等新型式ダムなどの新技術の開発、②ダムの再生・再開発、ダム群の再編・連携などの既設ダムの有効活用、③ダムの総合点検、長寿命化計画の策定などの3点に重点を置いて当センターの業務に取り組んでいます。
 
また、ダム事業者が直面する様々な技術的課題を解決するため、国、都道府県や市町村の要請を受け、高度で総合的な技術支援を機動的に行っています。機関誌「ダム技術」やダム技術に関する技術書籍を発行することにより、ダムに関する情報を広く提供しています。ダムに関する調査、計画、設計、施工及び管理等の重要事項について、自主的な調査研究を進めるとともに、学識者、専門家、行政関係者、ダム工学会など関係学会、関係業界の協力を得て、最先端の調査研究・技術開発や技術指針類の作成を行っています。
 
さらに、整備や管理のダム現場での現地技術研究会やダム技術に関する研究発表会などを通じて、ダムに関係する技術者の実践的な技術の向上・継承に大きく貢献しています。国際大ダム会議等の国際会議への参加、海外技術情報の収集紹介などを積極的に行っています。
 
最後に、気候変動の影響により、今後災害のさらなる頻発化・激甚化が予測される中、当センターは、今後とも様々な最新のダム技術を通じて、災害を防ぎ国民の生命・財産を守る重要な役割を果たしていく所存です。当センターへのより一層のご支援とご協力をお願い申し上げます。
 
 
理事長   泊  宏
2024年12月
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↑一般社団法人ダム工学会HP
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